涸沢岳ハイク 意地の悪い山案内

G.W中、上高地で4日間を過ごし、涸沢岳に登った。
書きたいことはたくさんあるが、うまく言葉がまとまらない。

3000mを越える雪山を登ったのはこれが初めてで、
その体験は想像以上に過酷なものだった。

雲の高さまで続く雪の斜面と、どれだけ歩いても近づいてくれない山小屋。
強烈な日差し、からからに乾いた喉。
10歩進んでは立ち止まり、呼吸を整え歩きだす。
そんなことを何度も何度も繰り返していた。

涸沢ヒュッテにたどり着いたのが12時半頃。

小梨平キャンプ場↔涸沢ヒュッテというコースで、
かつ日帰りピストンの予定だったので体力を回復するためにも
おでんとビールを胃袋に流し込み1時間ほど仮眠。
よほど疲れていたのか、1分もかからずに眠りに落ちた。

1時間きっかりに目が覚めて、足早に下山。
雪山の下りは登りとは比較にならないほど足取りが軽く、
登りのときの1/4の時間で本谷橋まで下ることができた。

雪山を下った安心感から少しばかり心に余裕ができ、
とりとめのない話をポツポツとしながら小梨平キャンプ場までゆっくりと時間をかけて帰る。

串田孫一の『山のパンセ』や 井上靖の『氷壁』

歳が30も離れた2人を結んでくれたのは、山に関する書籍達だった。

たまたま本屋でタイトルに惹かれ、手に取り、読み耽った『山のパンセ』。
その中で語られていたのは山と向き合う姿勢や、山に登るということの哲学。
今日日の流行りとは全く別次元の価値観に心奪われ、強く影響を受けていた僕は
好きな書籍が同じと言うだけで、涸沢岳に登ったという体験以上に大きく舞い上がっていた。

彼女は「はい」と答えて言われたとおりに私の前を歩き出した。
なんという従順なそのうしろ姿だろう。その足取りには、もっと歩調をはやめたほうが良いのか、それとももっとゆっくり歩かなければいけないのか、さっぱり見当もつかなくなっている不安定な気分が感じ取れた。
山のパンセ – 意地の悪い山案内 / 串田 孫一 著

山のパンセの一番最初に綴られているお話。
今思えば、今回の涸沢岳登山はまるでこの物語をなぞり書いたような、
とても印象深い登山だった。

これからも山を登り続けようと、強く誓った。

新選 山のパンセ (岩波文庫)
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