すこし遠くへ その1

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ネットの外にある物事は自分から遠くなり、かわりにネットの中のものすべてが痛いくらいに存在感を放っていた。
顔も名前も知らない人達のブログは毎日読まずにいられないのに、すぐ近くにいる、でもネット上にいない人たちは、立体感を失って、ペラペラの漫画みたいな存在になりかけていた。

『IT CHOOSES YOU -あなたを選んでくれるもの- / ミランダ・ジュライ著』より引用

ここまで読んで本を閉じ、すぐにキャンプ場へ予約の電話をいれた。

一語一句こぼさず、ひとつひとつの言葉を手で丁寧に掬うようにして読みたい本がある。

迷いはない。続きはキャンプをしながら読もう。

僕の心はすでに決まっていた。

 

◆ ◆ ◆

 

いるもの、いらないもの、必要ではないけど気に入っているものをザックに押し込み、
空が明るくなるのを待って出発した。

何を食べよう、燃料は現地で調達しよう、乾いた枝は見つかるだろうか、
そんなことを考えながら車を走らせていると自然と顔がにやけてくる。

8号線を金沢から小松方向に向かって走り、かほく市に入り100円橋を渡るころになって、
夏らしい太陽がギラギラと照り始めてきた。

一人で遠出をしていると、
小学1年生の頃、初めて買ってもらった自転車で遠出をして道がわからなくなり
泣きながら自転車を押して家まで帰ったことを思い出す。

あの時感じた不安や怖さは、決して帰り道が分からないからではなく、
自分が全く知らない世界や場所があるということを初めて体感したからだと、今となっては思う。

いつからだろう。
行ったことはないが既に知っている場所を、
まるでTodoリストの上から順に消していくような感覚で周るようになったのは。

 

◆ ◆ ◆

 

かほく市にある地元の小さなスーパーで、ビールを5本、お肉を2パック、
あとは野菜を少しと果物を1つ買って、キャンプ場へと向かった。

つづきます

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